私のふるさと、北原（きたばら）、を紹介しましょう。

ええひよりやのぉー。まあ、よってったってぇーやぁ。

呼称

行政的には”きたはら”というのだそうですが、近隣（糸引小学校区）では皆”キタバラ”と発音します。また、同じ校区の東山（ひがしやま）は”ひがっしゃま”、奥山（おくやま）は”おっきゃま”と発音されます。

位置

兵庫県姫路市の南東部に位置し、灘中学校区のうち糸引小学校区に属しています。
東を奥山（おくやま）、西を兼田（かねだ）、西南を妻鹿（めが）、南を白浜、北を東阿保（ひがしあぼ）と隣接しています。
JR姫路駅南口から市営バスで約１５分です。
山陽電鉄白浜の宮駅から北方に徒歩約３０分です。

地形

南に向山（むかいやま）「御旅山（おたびやま）」、北にゴワン「仁寿山（じんじゅざん）」、東に片山（かたやま）「仁寿山から南方に延びる舌状丘陵」、西に西山（にっしゃま）「御旅山から北方に延びる舌状丘陵」に囲まれ、南東方向に糸引・白浜平野が広がっています。

地籍図に見られる小字名

西山（にっしゃま）：山。山麓部は山田と畑。
坂ヨリ（）：山。山麓部は山田と畑。
向山（むかいやま）：山。
寺山（）：山。山麓部は山田と畑。
宮西（）：水田、山田、畑。
林本（はやしもと）：水田。
才田（さいだ）：水田。
下坂ヨリ（）：水田。”サカオリ”が通称。
村西（）：
上ノ筋（）：古くからの集落の中心部。お寺がある。
中ノ筋（）：古くからの集落の中心部。
下ノ筋（）：古くからの集落の中心部。
羽田（はだ）：水田。渡来人秦氏の名残か？
渡来（わたらい）：水田。渡来人の名残か？
松本（）：水田。
冬木（ふいぎ）：水田。一部は”クマノサキ”が通称。
片山（かたやま）：山。
上長田（）：”長田（ながた）”が通称。水田。
下長田（）：水田。
才ノ神（さいのかみ）：水田。
北条田（ほうじょうでん）：水田。
コモラ：水田。
テコノハナ：”てごのはな”が通称。水田。
ナタテ：一部は”ソネド”が通称。水田。
ヲイ：水田。
上ヤニ：水田。
下ヤニ（しもやに）：”ウラボ”が通称。水田。
九ノ坪（くのつぼ）：”八ノ坪（はちのつぼ）”が通称。水田。
平田：水田。
国木：水田。
西山：山。仁寿山の南東斜面。奥山の島池の北側の急斜面。
峠東（甲）：山。
峠東（乙）：山。
カマベ：水田。

地名

境松（さかいまつ）：片山の南端にあった大きな松。今は枯れてしまった。
テゴノハナ：片山の南端。昔は海につきでた岬であったという。
腹突き出し：ゴワン山の南斜面に延びる尾根筋の途中の盛り上がり。
精米所：元屋台庫。村の共同米つき場。こことお寺をつなぐ道の東側を東所（ひがっしょ）、西側を西所（にっしょ）と呼ぶ。

大歳さん（おおとっさん）：村の西のはずれにある大歳神社。

住吉さん（すみよっさん）：お宮さんのすぐ東側にある小さな神社。

お宮さん（おんみゃさん）：八幡神社。

お寺さん（おてらさん）：北隆山慶応寺。
馬場（ばば）：お宮さんから新道までを南北につなぐ道。大正11年に八幡宮を建て替えた際に民家を移築し、新しくつくられたらしい。
新道（しんみち）：県道北原八家線。姫路駅と白浜・東山方面をつなぐ幹線道路。大正から昭和初期の頃に新設されたらしい。それまでは、村内の道が幹線であった。
お宮の山（おんみゃのやま）：お宮さんの裏山。仁寿山から南方に延びた丘陵の一つ。今は姫路バイパスで分断されているが、打越山とは尾根続き。頂上は平坦で、子供の遊び場だった。お宮の裏のどんどには”しばはり”、 ”きいたけ（黄茸）”や”ほんたけ（本茸）”といったキノコ類が秋にはたくさん採れた。
ごわん山：北原から見上げた仁寿山（じんじゅざん）の総称。
向山（むかいやま）：北原から見上げた御旅山の総称。
片山（かたやま）：仁寿山から南に長く延びた丘陵。昔、屋台を練り上げていたらしい。この尾根の先端がテゴノハナ。
西山（にっしゃま）：御旅山から北に長く延びた丘陵。尾根筋は兼田との境界。
麻生山（あさおっさん）：奥山集落の背後にそびえる岩峰。その山容から”小富士山（こふじさん）”とも呼ばれる。仁寿山とは尾根続きで、峠道は奥山と東阿保をつないでいる。
梅岡（うめおか）：河合さんの墓のある尾根の裾まわり。
八つ岩（やっついわ）：向山の北西にある大きな岩。
とぎのあっちゃ：片山の南縁で、農作業用のナヤが立ち並んでいるところ。
大川（おおかわ）：糸引井の幹線水路。糸引井は川端（かばた）で奥山、継、東山方面への水路と白浜（松原、中村、宇佐崎）方面の水路の分かれる。
ゆみど：大川から分かれて各水田にひかれる細い水路をいう。カンガイ用水。
曲がりたて：大川が仁寿山の裾をまいて曲がったあたり。東兼田のあたり。姫路から帰ってくると、もうすぐ北原と思えるあたり。
北峠（きたとうげ）：西山を越えて北原と兼田をつなぐ峠。峠付近は味噌岩をハッパでくだいて平坦化をはかっている。北側の斜面に兼田古墳群6号墳が半分以上けずりとられた形で残っている。
妻鹿峠（めがとうげ）：御旅山と甲山（こやま）のあいだの峠。妻鹿と北原をつなぐ道がむかしからあった。峠付近は兼田の土地。
西所（にっしょ）：お寺と精米所（旧屋台庫）をむすぶ道より西。
東所（ひがっしょ）：お寺と精米所（旧屋台庫）をむすぶ道より東。
川端（かばた）：大川の分岐点。
せんど：御旅山の北東に延びた尾根の裾の墓地のあるところ。昔は火葬場や輿入れの倉庫などがあった。
継のくずれ：継から見野にぬける道の墓地のあるあたり。
かすば：白浜の海水浴場のあたり。
砂止め：白浜との境界を流れる大川の砂がたまるようになっているところ。

歴史の概略

旧石器時代

西山の尾根上で石器数点が表面採集されているので、そのころから人が住んでいたようだ。
近隣では八家の溜め池からも石器が採集されている。

弥生時代

西山に住居跡出土。また、梅岡のふもとの兼田の箱谷に遺跡。

古墳時代

西山に兼田古墳群、打越山、梅岡に古墳がつくられる。
北峠の北側の山頂に兼田大塚古墳とよばれる前方後円墳がある。
近隣では、奥山に大塚古墳（数基）
御旅山に、十数基の古墳があり、御旅山3号墳は昭和？？年に発掘調査された。

奈良時代

条理制がひかれ、小字名として残る”八の坪”、”九の坪”などができる。

南北朝時代

元弘(1331-1334)の頃妻鹿孫三郎の家臣に畠山六郎という人がおり、お宮の山の上に塚があったらしい。[飾磨郡誌]

妻鹿孫三郎長宗：南北朝時代に、赤松円心の家臣として活躍した戦国武将であり、妻鹿と兼田の境界にある甲山の山頂にあった「功山城（甲山城）」の初代城主。のちに功山城や姫路城の城主となり、豊臣秀吉の家臣となって日本史の表舞台におどりでた黒田官兵衛の母方の先祖にあたる。妻鹿屋台の高欄掛に刺繍されている。

嘉吉(1441～1444)の頃この頃に村ができたらしい。[飾磨郡誌]

江戸時代(16?-186?)

1682(天和2年) 北隆山慶應寺創立
1713(正徳3年) 慶應寺本堂・庫裡建立
1750(寛延3年)頃播磨国飾東郡見野南庄北原村（姫路藩酒井氏領）
1750(寛延3年)頃播磨国飾東郡宇佐崎組北原村（姫路藩酒井氏領）
1864(元治元年) 北原八幡神社の遷宮が宝積院（松原山八正寺の社坊）仁隆により執り行われる。

明治時代(186?-1910)

1872(明治5年6月) 第八大区第九小区に属す。松原村に区務扱所
1873(明治6年) 糸引小学校創始
1874(明治7年10月) 第八大区第八小区に属す。
1875(明治8年) 北原村、兼田村、奥山村を校区とする函渓学校ができる。
1875(明治8年7月) 第八大区第三小区に属す。御着村に区務扱所
1880(明治13年9月) 第11戸長役場に属す。東山村に戸長役場
1881(明治14年6月) 北原村。
1883(明治16年7月) 東山組に属す。
1884(明治17年10月) 東山村々6ヵ村に属す。
1889(明治22年)4月1日糸引村が発足し、兵庫県飾磨郡糸引村大字北原となる。
1891(明治24年) 糸引尋常小学校北原分教場設置
1893(明治26年) 糸引尋常小学校北原分教場が独立し、横山尋常小学校となる。

大正時代(1910-1925)

1922(大正11年) 八幡神社造替（大工棟染：当村の福田瀬次氏）

昭和時代(1925-1989)

戦時中国鉄（現JR）の御着駅から白浜の砲兵工廠（現在の灘中あたり）にまで引き込み線があり、貨物輸送を行っていた。そのための、線路が小字ウラボを通っていた。
1945(昭和20年) ゴワン山の裏側に火薬庫（かやっこ）があったために、米軍のB29爆撃機の空襲に遭い、被弾。
1954(昭和29年) 飾磨郡糸引村が姫路市に編入し、兵庫県姫路市北原となる。
1981(昭和56年)頃西山で発掘調査が実施され、兼田古墳群1号墳から5号墳および弥生時代の住居址が発掘される。

平成時代(1989-現在)

2003(平成15年) 打越山古墳の発掘調査が実施される。埋葬部が確認され、鉄剣や勾玉などの副葬品が多数出土した。また、10月18日（土）に現地説明会が開催された。

人口の変遷(近隣地区との比較)

地区名（旧村名）	北原	兼田	奥山	継	東山
寛延3年(1750)	449	378	327	277	963
明治14年1月(1881)	401（96戸）	392（87戸）	387（84戸）	358（78戸）	1,469（340戸）
大正??年(19??)	489	515	491	457	1,752
平成13年(2001)	1,734	1,231	434	1,312	3,206

年中行事

正月：1月1日の早朝にお宮に集合し、仁寿山に登って初日の出をおがんだ。
とんど：１月１５日（小正月）の朝に行なわれる。
湯立て：６月下旬
千燈明（せんとうみょう）：7月14日の八幡神社の夏祭りに奉納される。
住吉神社夏祭り：７月３０日
七夕：８月７日
盆踊り：８月１４、１５日（青年団がお宮さんでやっていたが、いまは２１日に子ども会が大歳グランドでおこなっている。）
地蔵盆：８月２１日
秋祭り：１０月１４、１５日
除夜の鐘：１２月３１日の大晦日の年越しに慶應寺の鐘を撞く。

農業関連行事

種蒔き（たねまき）：5月上旬。以前は苗代（なわしろ）を作っていた。
川掘り：6月頃。大川とゆみどの掃除。
しろかき：6月中旬。田植えの直前
田植え（たぁーうゑ）：6月中旬。
差し苗（さしなえ）：田植えの後。
草とり：夏
稲刈り：10月初旬から中頃。
伊達がけ：稲刈りと同時。
脱穀：伊達がけして数週間後。脱穀機（だっこっき）
籾摺り（もみすり）：以前は11月にはいってからであったが、コンバインや乾燥機が普及してからは10月中旬から下旬。
供出（きょうしつ）：10月下旬。以前は11月の下旬にお宮の馬場に村中の米が集められて検査が行なわれていたが、現在は農協（JA）への持ち込みになり、晩秋の風物詩もひとつなくなった。

風俗

講衆（こうしゅう）：冠婚葬祭の相互扶助団体。”西の講”、 ”東上講”、”西上講”などがある。

言葉

そうだはぁ：そのはずだ。”だはぁ”は断定の助動詞。女性が使う。
そうけぇ：そうですか。
いったった：いらっしゃった。”たった”は尊敬の助動詞。
ごう（が）わく：腹がたつ。頭にくる。
べっちょない：どうもない。大丈夫。たぶん、”別条ない”か？
せんどぶり：久しぶり
地形

どんど：山の谷になっているところ。チガヤなどがはえていることが多い。

人間関係

よしみ：親戚
おもや：本家
しんたく：分家
にいちゃん：年上の男の人。兄である必要はない。
ねえちゃん：年上の女の人。姉である必要はない。

動詞

べろばかす：
めげてまう：（ものが）壊れてしまう。用例）あーあ、めげてもた。（あーあ、壊れてしまった。）
めんでまう：（ものを）壊してしまう。用例）そんなもん、めんでもたらあ。（そんなもの、壊してやる。）
いぬ：帰る。用例）ほな、いぬわ。（そしたら、帰ります。）
もうる：帰る。用例）すぐもーってくるかさいな。（すぐに帰ってきますからね。）
おせにする：育てる。用例）こんまいおり、おせにしてもーたからのお。（小さい時、育ててもいましたから。）
おーとー：合っている。用例）この問題おーとーか。（この問題（の答え）合っていますか。）

動植物

はめ：マムシ（毒へび）のこと、妻鹿峠へののぼり口にあたる坂下リの田んぼの上にたまにいる。
しょしょびんこ：めだか。
しゅんしゅん：かみきりむし。
とうがき：いちじく。
なんば：とうもろこし。

育児用語

てんどまっか：肩ぐるま
おっぱ：背中に背負うこと。

日常用品

ひぼ：ひも
てのごい：てぬぐい

農作業

なう：両手で藁をはさんで前後に動かして縄を作ること。”縄をなう”と使う。
いなう：肩に荷物をかつぐこと。
おかもん：米以外の畑で作る農作物。

姫路近辺を舞台とした歴史小説など

司馬遼太郎：”播磨灘物語（ー）～（四）”、講談社文庫(1975完結).
豊臣秀吉の軍師であった姫路城主黒田官兵衛を主人公とする本格的歴史小説。妻鹿の国府山城（現甲山）の話や御着城の話など、地モティーには垂唾の描写も豊富。
司馬遼太郎：”手掘り日本史”、文春文庫(1990).
司馬氏の祖父が広村（現広畑）の出身であり、秀吉時代の英賀城での戦いに従軍したらしい。
岳宏一郎：”軍師官兵衛（上）、（下）”、講談社文庫(2001).
黒田官兵衛を主人公とする歴史小説。
車谷長吉：”灘の男”、文学界、第59巻、第4号、pp.194-24、文藝春秋社(2005年4月号).
著者は飾磨の人。灘人必読、播州弁での文学作品は地元民には読み応え十分。濱田運送と濱中製鎖が主人公。なにより「北原」のフリガナがちゃんと「きたばら」になっとんがええ。麻生山のフリガナが「あそうざん」、仁寿山が「じじゅざん」となっとうとここはご愛嬌。

参考文献

”兼田-弥生遺跡と古墳群の調査-”、姫路市文化財調査報告7、姫路市文化財保護協会 (1982).
”御旅山3号墳発掘調査報告”、姫路市文化財調査報告2、姫路市文化財保護協会 (1971).
”兼田遺跡調査報告書-兵庫県姫路市兼田-”、兵庫県文化財調査報告書第8冊、兵庫県教育委員会 (1973.3).
”特集：播磨の旧石器”、旧石器考古学(旧石器文化談話会編)、21巻、(1980).
松本正信、安川豊史、春成秀爾：”播磨南部採集の旧石器”、旧石器考古学(旧石器文化談話会編)、24巻、pp.101-130 (1982.4).

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ほななー。